福知山線で脱線事故 50人以上死亡

上越新幹線が大地震に見舞われながらも犠牲者0ということで、世界中に日本の鉄道の安全性を示した、その半年後にこのような事故が起こるとは。

今回の事故が痛ましいものであると同時に、とても腑に落ちないというか、謎が多い事故だと思います。信楽高原鉄道のように連絡の行き違いから起こる人為的なものや、名鉄土佐くろしお鉄道のように、人間の犯すミスやエラーをシステムがリカバーしきれなかったもののように、原因がはっきりしていればあとは対策を粛々と実施するだけなのですが、今回の事故はそんなに単純な原因ではなさそうですし。

現時点での私の情報をもとに整理しようと思います。

運転士は居眠りや気を失うなど、「体調による理由で正常な運転ができない状態(体調不良状態)」だったか

まだ運転士が救助されていないので分かりませんが、その可能性はあると思います。
それが「制限速度超過」や「直前の駅でのオーバーラン・それによる遅延(オーバーラン・遅延)」の原因になったかもしれませんが、「事故」の直接の原因とはいえないと思います。

直前の駅(伊丹駅)でのオーバーランや、それによる遅延が運転に影響したか

「運転士の焦り」の原因にはなったと思いますが、それでも安全を最優先に考えたとき、それを理由として大幅な「制限速度超過」をするとは思いたくないです。
でも、どうしても思い出されるのは、1986年12月28日に起きた、餘部鉄橋での列車転落事故のことです。当時は民営化の前で、列車を遅延させると新会社に再就職できないなどと言われていたそうで、その運転士も焦っていたといいます。そして悲劇は起こっているのです。乗客がいなかったとはいえ、それでも真下の工場に勤める人が犠牲になったそうです。
それを考えると、「運転士の焦り」と「制限速度違反」の相関関係はあるといわざるを得ないでしょう。

「制限速度超過」が「脱線」を引き起こしたか

JR西日本の発表だと、事故のあった区間では「計算上、133km/hで脱線する」とのことですが、雨が降っていたり線路がぬれていたりといった状態や、車両の混雑率や車内の人の偏り方など、様々な要因でその値は変わるでしょう。でも、事故を起こした207系の設計最高速度は120km/h。それを考えると、計算よりやや低速でも脱線が起こりうる状態で、207系が最高速度で進入したというような状態ということになるのですが、そんな偶然は可能性が低いと思います。
つまり、「制限速度超過」は「脱線の起こりやすい状態」を生む要因の一つとは言えるでしょうが、「脱線」の直接の原因かどうかは分からないです。

「軽量の車両」が「脱線」を引き起こしたか

確かに、砂利に乗り上げやすくする、「脱線の起こりやすい状態」を生む要因の一つとなりましたが、重い車両だったら大丈夫だったかどうかは分かりません。
ただ、車体が衝突時の衝撃に弱かったことで「事故の被害・犠牲」を大きくしたとはいえるでしょう。

しかし、軽量の列車は省エネに資する効果もありますし、必ずしも「安全性」と「軽量化」は相反するものとは思いません。

なぜATSなど各種の「安全装置」が働かなかったか

福知山線に導入されているATSは「ATS-S」と旧型だったそうですが、今回の事故は信号無視をしたわけではないですし、カーブでの制限速度とは連携していないとのこと。ですからATSの新旧と「脱線」は関連はありません。
しかし、私が時々乗る井の頭線では、制限50km/hの区間の直前にある信号機は、絶対に「進行信号」(青信号、90km/h以下で走行)は出ず、「減速信号」(青と黄が点灯、70km/h以下で走行」しか出ません。もちろん今回のような制限速度超過があると、信号機と連携したATSが作動することになります。
福知山線の信号現示は分かりませんが、カーブの前に信号があればATSが作動しただろうし、作動すれば速度が低下するので「脱線」の危険性も減るし、たとえ脱線したとしても被害はもっと少なかったでしょう。

線路の上に置き石があった?

事故があった列車の1本前には、特急「北近畿」(最高速度120km/h)が通過しているはずです。定刻通りであれば、宝塚駅を9:02に出発していて、事故があった地点では、事故があった列車とはダイヤ上で約2分の間隔。事故があった列車がダイヤより1分30秒遅れで伊丹駅を出発し、塚口駅の時点では1分遅れだったことを考えると、特急とは3分の間隔だったということになりますが、果たしてその間に置き石をすることなどできたでしょうか?
となると、反対側の線路から吹き飛ばされて、偶然線路の上に乗ったか、ひょっとすると事故があった地点の少し北側にある道路の高架橋から投げ入れられたのかもしれませんが、これについては断定はできません。


上記を図にしたものは以下の通りです。等幅のエディタに貼り付けてごらんください。

                             「安全装置」
                               |
                               ×(働かず)
                               ↓
「体調不良状態」→「制限速度超過」→「脱線の起こりやすい状態」→「脱線」→「事故の被害・犠牲」
   ↓           ↑         ↑       ↑       ↑
 「オーバーラン・遅延」→「運転士の焦り」    |      「置き石」    |
                        「軽量の車両」−−−−−−−−−−+

最後になりましたが、犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方の一日も早い元の生活への復帰、そしてこのような事故が2度と起こらないことを願っています。