六本木ヒルズで回転扉に挟まれ男児死亡、他にも多数の事故

この事故はもちろん痛ましい事故だし、男児の冥福を祈ると共に、事故が起こらないように対策をとらなかった管理会社や森ビル側の責任、場合によっては回転扉の設計・製作を行なった会社の責任も問われてしかるべきである。
ただ、残酷な話ではあるが、男児やその家族にまったく落ち度や非がなかったわけではないし、ある意味で「仕方がない」ことでもあったと思う。
回転扉はもともと大人が通ることを前提にしたものだ。いわゆる一流ホテルやオフィスビルで多く設置されていたのはそのためである(東京ドームは、屋根を支える屋内の気圧を保つという別の理由もあるが)。たいていその横にはスライド式の自動ドアもあり、子供のうちは自動ドアを使い、大人(この場合は小学校高学年か中学生ぐらい)になって、初めて回転扉を使うというようにしていたような気がする。
なぜ子供に回転扉を使わせないかといえば「場合によっては危険だから」。回転扉がどういうもので、どういう使い方をすると安全に使えるのかが分からないと、今回のような事故が起こる可能性があるからである。
六本木ヒルズは、他の再開発ビル同様「大人の街」を志向して設計された。バリアフリー化など「高齢者にも使いやすい」などの配慮はあったと思うが、子供に対する配慮が欠けていたのかもしれない。

とはいえ、今回の事故後の対応は何か違和感を感じる。まず、回転扉が全面的に利用停止になったが、それは六本木ヒルズのみならず、各地で行なわれたという。それは自動車が人をはねる交通事故があった後に、自動車が全面的に利用停止になるようなもので、あまりに過剰な反応のように感じる。
ましてや、場所によっては回転扉を撤去するというところもある。それはあまりにおかしいのではないか。だったらなぜ回転扉をつけたのだろうか。出入りが効率的になるし、近代的で高級な印象を与えるなど、いろいろな理由があっただろう。
スライド式の自動ドアだって手動のドアだって、意図しない方法で使用すれば事故は起こる。まずは事故が起こらないように注意喚起したりするとともに、事故が起こったときに軽微な怪我で済むようにハードウェアを改善する(この場合、ドアに人が挟まっても安全なように、電車のドアみたく当たる部分にゴムをつける。あるいはエレベーターのドアのように圧力を検知したらすぐに開くなど)。
今回問題となったのは、注意喚起が不足していたことと、事故によって命まで失ってしまったこと。相手が子供だけに注意喚起は難しいとはいえ、「道路で飛び出すと車にひかれる」のように、子供に自らの安全を守るのは自らの判断・行動だという教育を行う必要があると思う。
ハードウェアの安全性を高めることももちろん大事だが、便利な道具も使い方を一歩間違えれば凶器にもなるということを、将来「大人」になる子供に教えることは重要だと思う。