初心に帰った気持ちで臨んで欲しい

まったく違った環境に違和感があったか

あややのオールナイト第1回目は、本人にかなりの戸惑いがあったように感じた。それはこれまでとまったく違う環境に置かれたからだろう。

まず録音と生放送の違いがある。録音番組は業界用語では「完パケ」と呼ばれる。「完全パッケージ」の略で、パーソナリティのトークの上に効果音や楽曲などを入れた状態のものだ。この状態の場合、あややは時間配分の計算や、その配分に合わせたトークを考える必要はなく、決まった時間だけトークすればよいのだ。
しかも、本人が「抜き録り」であったこともばらしている。これは、あややトーク部分だけをまとめて収録し、後で編集によってそのトークに効果音や楽曲を入れる収録方法で、忙しいパーソナリティがよく使う。確かに効率的なのだが、どのような番組になったかを本人が把握しずらい難点がある。

録音放送という前提では都合がよかったことだが、生放送を担当するあややに経験やノウハウを積ませるということではマイナスに働いてしまった。

しかも、放送時間も20分から2時間と大きく拡大した。20分時代には「もう終わり!?」ということも少なくなかったが、いきなり2時間ともなると、あまりに時間的な自由度が高くなりすぎて、逆に「こんな長い時間をどうやって埋めよう・・・」と思ってしまうのだろう。
短時間にコンパクトに話すことから、深夜に合った、ゆったりと落ち着いた話し方ができるようになれば、聞いている側にも安心感が感じられるようになるのではないか。

放送されるエリアも格段に広がった。13局ネットから36局となり、北海道から沖縄まで、ほぼすべての地域で聞けるようになった。特に深夜は「遠距離受信」も可能となるため、地元の局で入らなくても電波の強いニッポン放送等を受信するリスナーもいる。そのことがプレッシャーになった部分もある。

「自分には4年の経験がある」と思って放送が始まった瞬間、まったく勝手の違うことに気づいた彼女が感じた焦りは大きかったと思う。しかし、「Let's Do it!!」の経験は横に置いておいて、まったく経験のない1新人パーソナリティとして、これから経験を積んでいけばよい。実際に4年前はそうしてきたではないか。

彼女には他の曜日の放送を生で聞いて欲しい

多忙なあややには難しいとは思うが、是非オールナイトニッポンの他の曜日も聞いてもらいたい。特に一人で担当している西川貴教氏や土屋礼央氏の放送は役に立つと思う。
自分がどんな状態でラジオを聴いているかを体感することができれば、それをトークに反映させることも可能と思うからだ。そして、深夜ラジオに愛着をもてるようになるだろう。
ラジオに愛着を持った人でないと、番組を続けていくのは難しいように思う。自分の番組が好きで、そしてラジオが好きになっていけば、自然とリスナーはついてくるだろう。

制作側にも課題

番組の制作にも課題は多い。今回オールナイトニッポン開始にあたり、「スタッフは全然変わってない」(あやや談)とのことで、おそらく「Let's Do it!!」を2時間に拡大したような番組構成にしたのだろう。そのため、間延びするような構成になってしまった。またコーナーも少なく、「Let's Do it!!」から引き継いだものばかりなので、一般的に理解されやすく参加されやすいとは言いがたい。
また、細かいところでは、後の番組を担当する斉藤安弘氏、通称アンコーさんに呼びかけなかったりなど、深夜ラジオ、またオールナイトニッポン独自の「文化」や「風習」に合わない構成も見られた。どこか「完パケ」なつくりになっていたように思う。それが新しい試みであるなら応援したいが、これまでの数十年にわたる経験を利用して、リスナーにとってベストな番組を作って欲しいと思う。

番組を形作るのはリスナー

とはいえ、リスナーは聴くばかりの存在ではないことは、深夜ラジオの面白いところ。某ネット企業の社長が主張する数十年も前から、ハガキや電話、FAX、最近ではメールなどを通じて番組に参加する、いわゆる「双方向」のメディアだったのだ。
そして、それらのメディアを使って、面白いネタを投稿することで番組に参加、いや番組を"制作"してきた人たちがいた。それが「常連さん」。中には実際の放送作家になった人も多く、いわば作家デビューへの登竜門のひとつ。
投稿のレベルが上がれば、必然的に彼女の番組の評価も上がり、さらに投稿が集まってレベルが向上する・・・という好循環になることを期待したい。